遍路が頼るGPS地図アプリ

 四国八十八ヶ所第45番札所・岩屋寺から第44番札所・大寶寺に打ち戻り、時計とにらめっこしながら、第46番札所・浄瑠璃寺に行くルートを検討してみました。まずはオーソドックスに三坂峠を経由して歩いていくと、大寶寺から浄瑠璃寺まで20.6kmあるので約5時間。浄瑠璃寺のすぐ近くにある第47番札所・八坂寺まで一緒にお参りしたいのですが、この時点で午後1時近かったので、歩いて行くと納経所が閉まる午後5時までに浄瑠璃寺と八坂寺を打てそうにありません。ちなみにお遍路さんは、札所のお寺をお参りすることを「打つ」と言います。納札代わりの木札をお寺の門に打ち付ける習慣がかつてあったからだそうです。

 ここは路線バスを使って時間を短縮することにしました。三坂峠には古い遍路道が残っているそうですが、今後の日程を考えると、この日のうちに松山市内の札所は回りきってしまいたかったのです。といっても、大寶寺のある久万高原から浄瑠璃寺に直行する路線バスはありません。JR松山駅行きの路線バスに乗り、途中の塩ヶ森バス停で降り、舗装された急な下り坂を3kmほど、だーっと降りていきます。三坂峠の下り坂もけっこう寂しい道で、女性ひとりではちょっと勇気が必要になるそうですが、この塩ヶ森から浄瑠璃寺への下り坂も、まったく人の気配がありません。道が蛇行しているので、自分の歩いているルートがきちんと目的地に向かっているのかさえ、怪しい感じです。

 こんなときに強い味方になるのが、GPSを使ったiPhoneの地図アプリですね。特に「おへんろ電子道標」というサイトが紹介している地図アプリ「MAPS.ME」が頼りになります。なぜなら、これは携帯電話の電波が届かないところでも、GPSだけで自分の位置情報を地図に落とし込んでくれるから。自分の現在位置がきちんとわかれば、あとは歩き遍路たちが愛用しているへんろみち保存協力会の地図「四国遍路ひとり歩き同行二人[地図編]」と見比べて、ルートを確認できます。地図アプリと歩き遍路愛用の地図については、リンク先のガイド編に詳しく書いておきました。

 寂しい下り坂をどんどん歩いて人里に降りると、すぐに浄瑠璃寺に着きました。境内では庭木に勢いがあって緑陰が濃く、とても雰囲気のいいお寺です。江戸時代に山火事の延焼でほとんどの伽藍を焼失したそうですが、地元の庄屋さんが住職になって数十年がかりで建て直したそうです。そのときに建てられた本堂は今も現役で、年季の入った本堂のたたずまいから地元の人たちに大切にされていることが伝わってくるようでした。

緑陰が心地よい第46番札所・浄瑠璃寺の境内。正面の本堂は江戸時代に山火事の被害を受けて再建された

 浄瑠璃寺の脇から出て、10分ちょっとで八坂寺です。柔らかな曲線の屋根を持つ山門をくぐると、明るい境内が広がっていました。八坂寺を打ち終わり、時間は午後3時半。八坂寺前バス停から森松行きバスに乗り、森松から路線バスと路面電車を乗り継いで道後温泉へ。終点の道後温泉から15分ほど歩き、午後4時45分ごろ、第51番札所・石手寺に駆け込みました。第48番札所・西林寺、第49番札所・浄土寺、第50番札所・繁多寺は昨日にお参りしているので、次は石手寺となったわけです。

 石手寺は有名な道後温泉の近くにあり、霊場というだけはなく、観光名所としても親しまれているお寺です。山門をくぐると、木製の瓦屋根で覆われた石畳の参道があり、そのアーケードのなかに仏具やお菓子を売る商店が並んでいました。私が着いたのは納経所が閉まる午後5時近くだったので、境内は閑散としていました。

第51番札所・石出寺の参道。瓦屋根の木造アーケードでは、やきもちを売る店や仏具店などが並ぶ

 石手寺には、五重塔といった立派な伽藍だけでなく、地底マントラといった一風変わったスポットもあり、B級スポットのお寺としてネット上やテレビのバラエティ番組で注目されることも多いみたいです。お遍路さんにとっては、石手寺は衛門三郎ゆかりの札所として知られています。衛門三郎は一夜の宿を求めた弘法大師を邪険に扱った強欲な商人で、のちに改心してお大師さまに会うために遍路を繰り返した末、第12番札所・焼山寺に近い杖杉庵でお大師さまに巡り合ったという人物です。石手寺の参道の入り口には土下座した衛門三郎の像がありました。

 この日のお遍路さんも無事に終わりです。歩行距離は22.0km。路線バスでの移動時間もありましたが、岩屋寺から大寶寺へ続く遍路道は印象に残るルートでした。JR松山駅近くのホテルに戻って、洗濯をしてぐっすり眠ります。

【第17日 午後の部】
[歩いた日] 2016.10.17 月曜日
[コース] JR松山駅周辺-久万高原-岩屋寺-浄瑠璃寺-石手寺-JR松山駅周辺
[天気] 晴れ
[歩行距離] 22.0km
[歩数] 2万9298歩

【利用した公共交通機関】
 <久万中学校前-塩ヶ森>
 ジェイアール四国バス
 料金 710円(平成29年4月1日改定)
 http://www.jr-shikoku.co.jp/bus/businfo/rosen_matuyama/matuyama-otide.htm

 <八坂寺前-森松>
 伊予鉄バス 丹波線
 料金 360円
 http://www.iyotetsu.co.jp/rosen/bus/

 <森松-大街道>
 伊予鉄バス 森松・砥部線
 料金 460円
 http://www.iyotetsu.co.jp/rosen/bus/

 <大街道-道後温泉>
 伊予鉄 市内電車 ③番松山市駅線
 料金 160円
 http://www.iyotetsu.co.jp/rosen/

 <道後温泉-JR松山駅>
 伊予鉄 市内電車 ⑤番JR松山駅前線
 料金 160円
 http://www.iyotetsu.co.jp/rosen/

【お宿メモ】
[宿泊先] ホテルサンルート松山
[宿泊費] 4,500円(素泊まり) 
 前日から連泊したJR松山駅に近いビジネスホテル。JR線はもちろん、大寶寺や岩屋寺のある久万高原町に行くJRバスを利用するやめには便利な立地になっている。ただ、松山市の繁華街中心部からは離れており、周囲に飲食店は少ない。ホテル内には宿泊者向けのランドリーはなく、近所のコインランドリーを利用することになる。

 

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