根来寺:戦国時代の傷跡伝える大塔

 和歌山県の根来寺(ねごろじ)に参拝しました。シンボルとなっている国宝の大塔は、とても美しいフォルムを持った木造建築です。高野山の大塔は朱塗りですが、こちらは戦国時代(1547年)に建てられた当時の朱色が落ちてきて、きれいな木目が表れている分、しっとりと落ち着いた印象を受けました。

 この大塔は根来寺が豊臣秀吉に攻められ、ほとんどの堂宇が焼け落ちたときに奇跡的に残されたもの。戦国時代の根来は鉄砲作りで知られ、織田信長や豊臣秀吉に抗うほどの僧兵を擁していましたから、秀吉との決戦は壮絶なものだったそうです。当時の傷跡はいまもこの大塔にたくさん刻まれているそうでが、ちょっとみただけではわかりませんでした。そんな歴史を乗り越えて、この風格があるのですね。

美しいフォルムを持つ根来寺の大塔。秀吉による兵火を伝えるモニュメントでもあります

 根来寺は弘法大師空海の入定後、求心力を失いかけていた真言宗を立て直したとされる興教大師覚鑁ゆかりのお寺で、新義真言宗の総本山です。秀吉の兵火で壊滅的な打撃を受けたあと、江戸時代に復興させたそうですが、広大な敷地に施設が飛び飛びに建て直されていった感じで、兵火に会う前の隆盛がどれほどのものだったのか、ちょっと想像しきれません。寺院ではありますが、僧兵のイメージはいまだに残っており、ふと奥州平泉で芭蕉が詠んだ「兵(つわもの)どもの夢の跡」というフレーズが頭に浮かびました。

 ちなみに根来寺のある岩出町のゆるキャラは僧兵に由来する「そうへぃちゃん」です。根来寺は高野山と和歌山市の間にありますから、かつては四国八十八カ所を打ち終わったお遍路さんたちも高野山へのお礼参りの途中に立ち寄ったのかもしれません。

[歩いた日] 2017.12.21
[天気]   晴れ

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