白峯寺に続く山深き遍路道

 奈良時代に鎮護国家の国策として全国で整備された国分寺ですが、四国では阿波、土佐、伊予、讃岐の4カ国すべてで、奈良時代に定められた旧国分寺の敷地がそのまま現在のお寺となっています。もちろん、4つとも四国八十八ヶ所の札所です。そのなかで第80番札所となっている讃岐の国分寺は、こんもりとした緑の森を背景にかつての自然環境がかなり残っていると言われています。天皇寺から国道11号線に沿って歩いてきて大きな立体交差を手前の側道に入り、JR予讃線の国分駅を通り過ぎると、左側に立派な山門があります。

 境内に入ると、きれいに整えられた石畳の参道が本堂に向かってすーっと伸びていて、気持ちがいい景色が広がっていました。本堂がある位置は、奈良時代には講堂があった場所だそうで、その講堂の礎石をいまもそのまま使って本堂が建てられているそうです。奈良時代には、金堂や塔もあったのですから、さぞかし優美な姿だっただろうな、などと想像してしまいました。伽藍跡がよく残っているので、境内は国の特別史跡に指定されています。国分寺のご本尊は奈良時代には全国共通で釈迦如来だったはずですが、讃岐国分寺の現在のご本尊は千手観音です。

第80番札所・国分寺は、奈良時代のたたずまいをしのばせる優美な境内を持っています

 讃岐国分寺の背後には国府台と呼ばれる標高400m級の丘陵地があり、第81番札所・白峯寺と第82番札所・根香寺につながる遍路道は、その丘陵地を乗り越えていくことになります。高松の市街地にもそれほど遠くないのだから、たいした道じゃないだろうと、高をくくっていたら、これがびっくりするほど緑の深い山道でした。

 まずは国分寺の脇にある路地から住宅街を抜けて一本松と呼ばれる県道の峠を目指します。距離は国分寺から3.4kmなのですが、けっこう急な登りがあって、たっぷり1時間かかってしまいました。そこから県道に沿って白峯寺に行こうと途中まで歩いたのですが、私が訪れた昨年秋にはちょうど台風の影響で道路が陥没したため通行止めで、やむなく一本松まで戻って昔ながらの山道をたどりました。峠からしばらく下ったところに白峯寺と根香寺への道が分かれる十九丁という分岐点があり、それが下の写真です。苔むした石仏や丁石があちこちにあって、昔の遍路道にタイムスリップしたんじゃないかと思うようなところでした。

第80番札所・国分寺から第81番札所・白峯寺に続く遍路道は、高松市の市街地近くとは思えないほど緑が豊かです

 十九丁から小さなアップダウンを繰り返しながら40分ほど歩き、第81番札所・白峯寺に着きました。白峯寺は丘陵地の谷の部分に伽藍が並んでいるので、かなり山深い印象を受ける古刹です。山門がやや高い位置にあって、そこかた納経所や本坊のある谷間にいったん下り、そこから本堂や大師堂に少し登り返すという傾斜地を生かした伽藍配置になっていて、それが山深い印象を与えるのかもしれません。

 白峯寺の開基は弘法大師空海とその甥とみられる智証大師円珍の2人です。宗教民俗学者・五来重は著書「四国遍路の寺」(角川ソフィア文庫)で、空海と同じように円珍も自然のなかで修行する辺地信仰になじんだ人だったのではなないか、と推測しつつ、白峯寺の境内が谷地に作られているのは、水の信仰があるからだ、と指摘しています。そうやって考えてみると、この白峯寺がある丘陵地も、第71番札所・弥谷寺と同じように、空海が歴史に登場する以前から四国の海岸線を回って歩いた修行者たちが集まるところだったのかもしれません。こうした辺地信仰は豊かな自然環境のなかで日本人が有史以前から育んできた宗教観につながると言われていますが、白峯寺もそうした日本人のDNAに刻み込まれてきた古来の価値観を感じさせてくれる霊場だと思いました。

 さらに白峯寺は、保元の乱で配流され恨みを残して逝去したと言われる崇徳天皇や、ここを訪れて崇徳天皇を偲ぶ和歌を詠んだ西行でも知られています。境内の奥まったところには崇徳天皇を祀る白峯殿がありました。崇徳天皇は後世になって怨霊伝説で有名になり、江戸時代には上田秋成の「雨月物語」に出てきたり、浮世絵の題材などにも取り上げられています。そんな崇徳天皇の霊を慰めたとされる相模坊という心優しい天狗の話もあります。

第81番札所・白峯寺は独特の雰囲気のある山寺です。地元の人たちの信仰も厚いようでした

 

 夕暮れになり、第82番札所・根香寺には納経所の締まる午後5時までにはとてもたどり着けないので、このまま宿に向かうことにしました。白峯寺から宇田津駅に向かって下り始めると、瀬戸大橋の上に大きないわし雲が広がっています。素晴らしい夕焼けになりそうでしたが、山道で暗くなるのは避けたかったので、さっさと駆け下りました。

第81番札所・白峯寺から坂出駅に向かって下り始めると、瀬戸大橋の上に大きないわし雲が広がっていました

【第23日 午前の部】
[歩いた日]2016.10.23 日曜日
[コース] 坂出市内−郷照寺−天皇寺−国分寺−白峰寺−高松市内
[天気]  曇り
[歩行距離] 24.0km
[歩数] 3万1484歩

【利用した公共交通機関】
 <坂出駅ー高松駅> 
 JR四国 予讃線
 料金  450円
 URL  http://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/kakueki/#routemap-box

【お宿メモ】
[宿泊先]オークラホテル高松
[宿泊費] 5930円(朝食付)
 高松市城東町1丁目9番5号
 087-821-2222
 http://www.okurahotel-takamatsu.co.jp
 高松琴平電気鉄道琴平線の片原町駅から徒歩数分にあるリーズナブルなホテル。片原町から瓦町一帯は高松市の中心部なので、飲食店なども豊富。コインランドリーは数が少ないので、街中で済ませた方が便利。

Share

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Translate »