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台風一過の山寺をたどる

 自宅で心身ともに3日間休養し、荷物を軽くして遍路旅を仕切り直すことにしました。成田空港からジェットスターで高松空港に飛び、JR高松駅から特急「うずしお」でJR徳島駅に戻って、駅前のビジネスホテルに宿泊。この日は朝からバスで勝浦町まで行き、第20番札所・鶴林寺を目指して再び歩き始めます。

 JR徳島駅を午前7時10分発の徳島バス勝浦線に乗りましたが、途中で朝の交通渋滞に見舞われ、鶴林寺の登山口となる生名バス停に着いたのは午前8時30分を過ぎていました。台風が過ぎたばかりで、空が抜けるように青い。山々の緑も鮮やかです。

 登り始めて間もなく、わらぶきの民家をイメージしたお遍路さん向けの休憩所があり、きらきらと水面を光らせながら蛇行する勝浦川が樹木の間からみえました。

生名バス停から登り始めると、まもなく樹間から蛇行する勝浦川が眼下に広がりました

 路面がぬからないように自然石を組み合わせた石段が敷かれていたり、ところどころに石仏が置かれていて、この道が古くから多くのお遍路さんに歩かれてきたことがわかります。汗をかきながら1時間半ぐらい山道を登り、霊鷲山と山号が大書された山門に着きました。

 門をくぐって石畳の緩やかな坂道をしばらく歩き、鶴林寺の手水場で手を洗って一休みしていると、谷から吹きあがってくる風が汗ばんだ体を冷やしてくれてとても気持ちがいい。境内では、日当たりがいいためか、まっすぐに高く伸びた杉の木立が目立っていました。鶴林寺はきれいに整えられた、静かで風格のある山寺です。

 納経所を出て第21番札所・太龍寺に向けて歩き始めると、すぐに急な下り坂になります。1時間ほど下り続けて那賀川に沿った集落に出たところ、お遍路さん向けの案内板がありました。休校になった小学校のトイレが利用可能だそうです。トイレの設置といい、その案内といい、こういう気配りはとてもありがたいものです。小学校の名前は大井小学校といい、現在は体育館が選挙の投票所などとして使われているとのことでした。

 那賀川は台風の影響のためか水量がずいぶん多く、うっかり水に入れば、そのまま流されてしまいそうな勢いでした。ちぎれ雲が浮かぶ青空と木々の緑を背景に、那賀川の川面が日差しを反射しながら波立つ様子はとても美しく、思わずみとれてしまいました。

流れが速く、水量も多い那賀川。ちぢれ雲が浮かぶ青空、緑の濃い山容が目にしみます

 自動車1台がやっと通れるような細い橋を歩いて那賀川を渡り、沢沿いの道を太龍寺に向かって高度をあげていきます。沢筋が枯れたあたりから登り坂がきつくなってきました。たっぷり1時間半かかって、いいかげん急登が嫌になってきたころ、太龍寺の駐車場につながる道路に出ました。さらに5分ほど歩き、山門から境内に入ると、こんなに深い山の中とは思えないような大きな伽藍が点在していて驚きました。太龍寺一帯の山々は空海が自伝で若き日に厳しい修行をした場所としてあげており、弘法大師の足跡をたどるお遍路さんにとって大切な霊場です。山頂部に建てられているため、境内ではそれぞれの伽藍が長い階段で結ばれており、本堂と太子堂にお参りするだけでもけっこう汗を絞られます。

 ここから次の第22番札所・平等寺に歩いて向かうルートはいくつかあります。現在の歩き遍路では、駐車所近くまで戻って車道を下り、大根峠の遍路道をたどるのが一般的で、多くのガイドブックもこのルートで説明しています。私は夕方5時までに平等寺に着きたかったので、太龍寺からロープウェーで下り、ロープウェー駅から徒歩5分の和食東から阿瀬比までバスを10分ほど乗ることで時間短縮を行い、大根峠の遍路道に出ることにしました。ただ、あとで知ったことですが、遍路道として歴史があるのは、太龍寺から南に向かい舎心ヶ嶽から太龍寺山を越えるルートでした。かなり厳しい山道のようです。私は古道が残っているところをなるべく歩くようにしていますで、本来ならロープウェーよりも太龍寺山を越えるルートを選ぶべきだったのですが、下調べが不足していました。これは後悔先に立たずで残念です。

 大根峠を越える道は太龍寺のような厳しさもなく、木立の中を気持ちよく歩けるルートです。阿瀬比でバスを降りてから1時間半ほどで平等寺に着きました。平等寺は創建時から湧き続けているという「弘法の霊水」で知られる札所で、最近は新たに宿坊「坊主の宿」をスタートさせています。平等寺の隣りには、歩き遍路の間で評判のいい宿「山茶花」があります。

大根峠から平等寺に向かう緩やかな下り坂は、緑陰を流れる風が気持ちいい

 平等寺を打ち終わるともう夕方でしたが、私は鉄道を使って先に進むことにしました。新野駅に着くと、ちょうど夕焼けが空に広がっていました。いったん自宅に戻って仕切り直し、再び遍路旅を再開した初日でしたが、20km弱の歩行距離をまずまずのペースで歩くことができました。新野駅からJR牟岐線に15分ほど揺られ、第23番札所・薬王寺の最寄駅となる日和佐駅に着き、駅近くのホテルに泊まることにしました。
 

【第6日】
[歩いた日] 2016.10.6
[コース]  JR徳島駅-(バス)-生名-鶴林寺-太龍寺-(ロープウェー、バス)-大根峠-平等寺-JR新野駅-(鉄道)-JR日和佐駅
[天気]   晴れ
[歩行距離] 19.8km
[歩数]    3万2064歩

【利用した公共交通機関】
 <JR徳島駅-生名バス停>
 徳島バス勝浦線
 料金 970円
 http://tokubus.co.jp/wptbc/routebus/

 <太龍寺ロープウェー>
 下り片道
 料金 1300円
 http://www.shikoku-cable.co.jp/tairyuji/

 <和食東バス停-阿瀬比バス停>
 徳島バス丹生谷線
 料金 360円
 http://tokubus.co.jp/wptbc/routebus/

 <JR新野駅-JR日和佐駅>
 JR四国牟岐線
 料金 360円
 http://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/jikoku/

【お宿メモ】
[宿泊先]ビジネスホテル ケアンズ
[宿泊費]4800円(素泊まり)
 日和佐駅南口の駅前サークルに面している。ビジネスホテルといっても、徳島市中心部にあるホテルのようなサービスは期待しないほうがいい。食事は、徒歩圏に居酒屋やコンビニエンスストアが数軒あります。駅北側にある道の駅日和佐(午後6時まで)も活用できます。

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