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猫の目天気の室戸路をたどる

金剛頂寺の本堂

 室戸岬にある民宿「うまめの木」の朝食は、さかなの出汁が効いた味噌汁に炊き立てのごはんがとてもおいしくいただきました。午前7時半ごろ、気持ちよく出立して近くの停留所からバスに乗ると、15分ほどで室戸市の中心部に到着。漁業の町らしく港を中心に川沿いの平地に細い道が網の目状に広がっていました。 

 室戸市の市街地にある第25番札所・津照寺は、近くに漁師さんを相手にする居酒屋やスナックが立ち並び、いまにも街並みに埋もれてしまいそうな場所にあります。朱塗りの山門をくぐり、すぐに真正面にある108段の急な階段を登ると、丘の上にあるコンクリート造りの本堂は港町を見下ろすビュースポットになっていました。海上安全を願う漁師たちから大切にされてきた庶民的なお寺という雰囲気です。

第25番札所・津照寺の山門をくぐると、108段の急な階段が現れます

 室戸では秋祭りが盛んらしい。高知では秋祭りのことを「神祭」(じんさい)と呼ぶそうです。現在は市町村合併で多くの町村が室戸市に統合されていますが、祭りはいまも伝統的な町単位で行われています。10月最初の土曜日に通りかかったところ、津照寺から第26番札所・金剛頂寺に向かう路地には「御神燈」と墨書きされた提灯があちこちに掲げられ、港にも立てかけられた竹にしめ縄が結ばれて神域となっていました。

 この日は湿度が96%で、降水確率は80%。歩いているだけで肌がじっとりしてきます。車道を離れ、金剛頂寺に続く山道に入ったところで、さっそく強い雨のシャワーを浴びることになりました。天気は猫の目のようにくるくる変わります。30分の間に、雨から青空になったかと思うと、また雨雲が広がってきます。

 樹影の濃い坂道をしばらく登ると、大きなわらじを掲げた第26番札所・金剛頂寺の山門に着きました。室戸岬は空海が青年時代から修業の道場として重視した場所です。岬の近くには、天皇の勅願を奉じて大同2年(807年)に空海が開創したお寺が2つあり、ひとつが東寺と呼ばれる最御崎寺で、もうひとつが西寺の通称を持つ金剛頂寺となっています。

 現代風に表現すれば、この2寺は、皇室の公認を得た上で、空海がプロデュースした室戸岬の霊場とでも言えるでしょうか。ガイドブック「四国遍路ひとり歩き同行二人解説編」によると、このうち東寺は、空海が開創したときは、現在の最御崎寺よりも北の四十寺山にあり、最御崎寺が現在の場所に移ったのは寛徳年間(1044年ごろ)とのことです。四国八十八ヶ所巡礼がいつ始まったのか起源がはっきりしないとされるなか、金剛頂寺は空海が直接的な関わりがいまに伝わっている霊場のひとつです。

優美な姿を見せる第26番札所・金剛頂寺の本堂。屋根の両端を飾る鴟尾(しび)が目を引きます

 いったん青空が広がったのですが、金剛頂寺から山道を下る途中で再び雨が降り始め、国道55号線に沿った道の駅「キラメッセ室戸」に降りてきたころには土砂降りになってしまいました。なんだか亜熱帯のスコールを思わせるような降り方です。やっぱり土佐は南国ですね。たまらず道の駅に駆け込もうとしましたが、タイミングが悪く改装のため休業中で、地元野菜を販売する狭いスペースがあるだけでした。軒先を借りてしばらく雨宿りさせていただき、やってきたバスに乗り込みました。

 この日は10月最初の土曜日で旅行者が多いらしく、なかなか宿がみつかりません。いくつかあたってみたところ、運よく吉良川町にある蔵空間茶館が空いていました。室戸岬から移動距離が短すぎる気もしますが、まあ、仕方ないでしょう。キラメッセ室戸から乗り込んだバスに15分ほど揺られただけで吉良川町に着きました。

【第8日 午前の部】
[歩いた日]2016.10.8
[コース]うまめの木-(バス)-室戸-津照寺-金剛頂寺-キラメッセ-(バス)-吉良川-蔵空間茶館
[天気] 晴れときどき強い雨
[歩行距離] 12.1km
[歩数] 1万7484歩

【利用した公共交通機関】
 <東坂本-室戸>
 高知東部交通
 料金 340円
 http://www.tobukoutsu.net/

 

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