バス・鉄道で最果ての足摺岬

 第37番札所・岩本寺から窪川駅に戻り、第38番札所・金剛福寺のある最果ての足摺岬を目指します。岩本寺から金剛福寺までは約80kmもあり、四国八十八ヶ所めぐりのなかで札所と札所の距離がもっとも離れている区間。歩けば3日間かかりますが、鉄道とバスを乗り継げば3時間足らずです。今回は日程と予算の都合からお得な切符「四国西南周遊レール&バスきっぷ」を使って足摺岬に向かうことにしました。

 窪川駅午前10時57分発の特急「あしずり1号」は、中村駅で11時32分発足摺岬行きの路線バスに接続しています。このバスは四万十川が太平洋に流れ込む河口近くを通り、続いて内陸の峠を越えて土佐清水市に入ると海岸線に出ます。展望が良く、すっかりバス旅行の気分になりましたが、なにしろ中村駅から足摺岬まで片道130分の長丁場。なかでも、土佐清水市中心部から足摺岬までは、アップダウンと急カーブを繰り返しながら、ジョン万次郎の生家がある中浜など断崖の続く海岸線に点在する集落をつないでいくので、なかなか足摺岬にたどり着きません。

 第38番札所・金剛福寺は足摺岬バス停から至近にあります。広々とした境内全体を中世に補陀落と呼ばれた浄土のイメージできれいに整備しようとしているようで、私が参拝した時は、山門の脇で小型のユンボが石畳と植え込みを作っている最中でした。境内は120,000平方メートルもあり、東京ドーム2.5個分にあたる広大な境内です。

第38番札所・金剛福寺の境内では、本堂が池に映り込み、補陀落浄土のイメージが重なります

 最果ての足摺岬に堂々たる境内を構える金剛福寺は、僻地にありながら歴代天皇の勅願所となり、源氏をはじめとする武家からも帰依を受けてきました。金剛福寺を支えてきたのは、観自在菩薩(観音菩薩)が住む浄土が南方にあり、そこを補陀落と呼んであこがれの浄土とみなした「補陀落信仰」です。平安時代から戦国時代まで浄土信仰が広がる中、阿弥陀如来がいる西方浄土と同じように、補陀落浄土の人気は高まっていったそうです。金剛福寺はその補陀落浄土につながる入り口と位置づけられていたとのことで、周囲を整備中だった山門には「補陀落東門」と書かれた扁額がかかっていました。

 ただ、補陀落には必ずしも憧れの浄土というイメージだけではありません。紀伊半島の那智勝浦や足摺岬など南方に突き出した海辺では、行者たちが生還できないと知りながら浄土を求めて船に乗って海に漕ぎ出す「補陀落渡海」を敢行した歴史もあります。補陀落渡海には自発的な渡海だけでなく、強制されたケースもあったとされ、中世の「とはずがたり」のような説話から諸星大二郎のコミックまでさまざまなストーリーの題材ともなってきました。

金剛福寺の山門脇では、縁石を整備する職人さんを作務衣姿のお寺関係者が塀の屋根から見守っていました

 足摺岬の先端部分は近づき難い断崖になっていますが、その周囲に絶景を楽しめる遊歩道があります。金剛福寺から数百メートル歩いた駐車場の奥から遊歩道に入ると、樹相の変化が印象的でした。黒潮に乗った南風が直接吹き付ける絶壁の上部に、ツバキがジャングルのようにこんもりと繁っていました。ヤブツバキという野生のツバキらしい。足摺岬一帯はツバキのジャングルで、沖縄のような南の島とも本州の沿岸部とも違う、独特の雰囲気を持っていることを知りました。そこは湿気をたっぷり含んだ南国の海風が吹き込んでいて、なんだか艶かしい遊歩道でした。

ブツバキに囲まれた遊報道を歩き、「天狗の鼻」から足摺岬を望む

 足摺岬の絶景スポットはいくつもあります。灯台のある岬先端部を足下の断崖と一緒に眺められるのは、岬の展望台からさらに東に歩いた「天狗の鼻」という突端部で、私はそこからの眺めが気に入りました。小さな東屋の前に腰をかけ、岬に砕ける波をぼーっとみていたら、すぐに一時間近く経ってしまいました。こういう時間の使い方もお遍路さんの醍醐味ですね。

 岬の灯台を越えて急坂を下り、波打ち際にある白山洞門まで足を伸ばしました。波が岩を削る海食作用でできた洞門で、その真ん中に白波が勢いよく打ち寄せています。太平洋の青い海が背景になっており、波の動きをみていると、これまた飽きません。

 この日の宿は、国民宿舎を改装して地元が運営する足摺テルメ。金剛福寺からさらに足摺岬の尾根筋を登った中腹に位置している快適な宿です。テルメの名前通り露天風呂など入浴施設が充実していて一般的な遍路宿よりも贅沢なしつらえですが、お遍路さん向けの宿泊プランを適用してもらい、洗濯がお接待で無料になるなどうれしいサービスを受けました。

 おすすめは足摺テルメの3階部分にあるライブラリーです。高知関連の書籍200冊が開架式の書棚に並び、ゆったりしたソファーに座ってくつろげます。コーヒーなどのソフトドリンクや高知産のゆずワインが無料提供されていて、気持ちのいい時間を過ごすことができました。

【第13日】
[歩いた日]2016.10.13
[コース]高知市中心部-窪川・岩本寺-中村-足摺岬・金剛福寺-足摺テルメ
[天気]曇りときどき晴れ
[歩行距離]9.4km
[歩数] 1万2589歩

【利用した公共交通機関】
 <高知-窪川>
 JR四国・特急しまんと1号
「四国西南周遊レール&バスきっぷ」を利用しない場合:2,640円(乗車券1460円+自由席特急券1180円)
 <窪川-中村>
 JR四国・土佐くろしお鉄道・特急あしずり1号
「四国西南周遊レール&バスきっぷ」を利用しない場合:1,500円(乗車券1090円+自由席特急券410円)
 <中村-足摺岬>
 高知西南交通バス
  http://www.kochi-seinan.co.jp/local/

「四国西南周遊レール&バスきっぷ」を利用しない場合:1,900円

   <四国西南周遊レール&バスきっぷ> 
  http://www.jr-eki.com/ticket/brand/1-00A

【お宿メモ】
[宿泊先]足摺テルメ
[宿泊費]お遍路おもてなしプラン8,560円(2食付)
 住所 〒787-0315 高知県土佐清水市足摺岬字東畑1433-3
 Tel 0880-88-0301
 HP http://www.terume.com/
 FB https://www.facebook.com/AshizuriTerume/
 足摺岬から坂を30分近く登った高台にあって眺めは抜群。男女に分かれた大浴場は露天風呂やサウナなど設備が充実しており、雄大な太平洋を眺めながらのんびり入浴できます。3階のライブラリーでは、高知関連の書籍200冊が開架式の書棚に並び、ゆったりしたソファーに座ってくつろげます。コーヒーなどのソフトドリンクや高知産のゆずワインが無料提供されているのもうれしい。元国民宿舎を地元スタッフのアイデアを生かして改装したとのことで、白を基調とした建物は清潔感があって気持ちがいい。お遍路さん向けの宿泊プランには洗濯のお接待がついており、希望すれば、金剛福寺やバス停まで送迎してくれます。

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