お遍路さんにもお得な切符

 高知の第37番札所・岩本寺から足摺岬や宇和島を経由して愛媛の第43番札所・明石寺まで7つの札所を、徒歩(合計60.3km)に鉄道や路線バスを組み合わせて4日間で一気に巡礼しました。4日間の期間にこだわった理由は、お得な切符「四国西南周遊レール&バスきっぷ」の有効期限が4日間だったから。それだけこの切符のお得感は抜きんでています。

平成28年版の「四国西南周遊レール&バスきっぷ」。平成29年版は6,300円に料金改定された

 私がこの切符を知ったのは、第23番札所・薬王寺の最寄駅となるJR四国牟岐線の日和佐駅のホームでした。お遍路さんの白衣を着た私が下り列車から降りると、線路を挟んで向かい側のホームに停車していた列車から女性のお遍路さんが降りてきて、いきなり大声で呼びかけられました。

 「そこのお遍路さ~ん。これから鉄道やバスで足摺岬のほうに行くんでしょう? だったらね、すっごいお得な切符あるの! 5,500円で高知から足摺岬を通って松山まで行けて、特急電車にも乗れる。私もこの切符を使って逆打ちで回ってきたんだよ~」

 突然、線路越しに大声で話しかけられてびっくりしたのですが、名前を教わった切符をiPhoneで検索してみると、確かにずいぶんお得みたいでした。私が「ありがとうございます!」と答えると、すぐにホームに発車ベルが鳴り響き、女性は「お互いに無事に結願しましょうね~」と言って元気いっぱいで上り列車に乗り込んでいきました。

 「四国西南周遊レール&バスきっぷ」は、JR各社と地元観光当局がタイアップして発売されている企画商品で、私は平成28年版をJR高知駅で購入しました。

 切符には愛媛県西部と高知県西部にフリー区間があり、その区間内はJR四国や土佐くろしお鉄道の鉄道路線と地元バス会社の路線バスが乗り放題。高知と松山からフリー区間までは片道の鉄道に乗ることができます。特急列車の自由席も利用可能です。

 気になる値段は、私が利用した平成28年版は5,500円。有効期間は4日間で、路線バスは乗車券10枚がついていて、足りなければ無料で追加できる仕組みでした。平成29年版は価格が6,300円に改定され、有効期間は4日間で変更なし。路線バスについては、乗車券5枚になっています。現在発売されている平成30年版は価格が6,500円に改定され、有効期間は4日間で変更なし。路線バスは切符をみせれば乗れるようです。

 詳細はこちら ⇒ 「四国西南周遊レール&バスきっぷ」http://www.jr-eki.com/ticket/brand/1-00A

 このフリー区間内に位置する四国八十八ヶ所霊場は、第37番札所・岩本寺(四万十町)、第38番札所・金剛福寺(土佐清水市)、第39番札所・延光寺(宿毛市)、第40番札所・観自在寺(愛南町)、第41番札所・龍光寺(宇和島市)、第42番札所・仏木寺(宇和島市)、第43番札所・明石寺(西予市)の7カ所。札所と札所の距離が離れている区間なので、すべてを歩いた場合は12日間から14日間程度かかる距離になります。

 実際に私が「四国西南周遊レール&バスきっぷ」を使い、この7つの札所を巡礼したルートで、通常料金がいくらになるのか計算してみました。

 <高知-窪川> JR四国・特急しまんと1号 2,640円(乗車券1460円+自由席特急券1180円)
 <窪川-中村> JR四国・土佐くろしお鉄道・特急あしずり1号 1,500円(乗車券1090円+自由席特急券410円)
 <中村-足摺岬> 高知西南交通バス 1,900円
 <足摺岬ー中村駅> 高知西南交通バス 1,900円
 <中村駅ー平田駅> 土佐くろしお鉄道 470円
 <一本松-御荘> 宇和島自動車交通宇和島バス 430円
 <御荘郵便局前-宇和島駅> 宇和島自動車交通宇和島バス 1,400円
 <宇和島-北宇和島> JR四国宇土線 160円
 <北宇和島-務田> JR四国宇土線 220円
 <卯之町-松山> JR四国予讃線 特急宇和海14号 2,640円(乗車券1,460円+特急券1,180円)
  合計 13,260円

 私が利用した平成28年版の「四国西南周遊レール&バスきっぷ」は5,500円でしたから、8,140円も割引された計算になります。合計額13,260円から比べれば、58%も割引された計算です。平成29年版の6,300円と比べても6,960円安く、割引率は52%となります。

 私の場合は、第39番札所・延光寺から宿毛市を通って松尾峠を越える部分など、このルートの4日間で合計60.3kmを歩いていますので、その区間を鉄道や路線バスを使えば、お得になる金額はさらに膨らみます。お遍路さんで鉄道や路線バスを利用するつもりなら、この切符を使わないともったいないですよ。

 ちなみにバスの乗車券が平成29年版では5枚に減りましたが、私がフリー区間内で利用した路線バスもちょうど5区間でした。四国八十八ヶ所霊場を順番に回るためには、ちょうどぴったりの枚数になりますが、もしも宿泊先などの関係で途中下車することになるとバスの乗車券が足りなくなる恐れもあるので、注意が必要です。

 たっぷりと使い倒してしまった「四国西南周遊レール&バスきっぷ」。JR四国の牟岐線日和佐駅で、わざわざ列車を降り、私に向かって大声でこの切符の存在を教えてくれた女性のお遍路さんに感謝しています。

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