横浪三里 巡航船の遍路旅

 第36番札所・青龍寺から次の第37番札所・岩本寺につながる須崎に歩いて進むには、3つの選択肢があります。ひとつは宇佐まで戻って浦ノ内湾の北岸に沿って歩くコース。古くからお遍路さんに歩かれてきたルートです。次に横浪半島を縦貫するスカイラインを歩くコースがあります。歩いたひとによると、アップダウンは多いが晴れた日には展望雄大ですばらしいウォーキングルートだそうです。

 3つ目は宇佐に戻って巡航船で横浪三里と呼ばれる浦ノ内湾を横断し、横浪から歩きになります。巡航船は須崎市が通学の足として運航している海上ルートで、穏やかな内海となっている横浪三里の独特な景観が魅力です。当然ながら体力的には巡航船がもっとも楽になります。ちなみに空海も横浪三里は船で海上ルートを進んだとも言われていて、遍路道としても巡航船が本来のルートだという見方もあります。

 私は横浪三里を満喫したかったので、この日は巡航船に乗る、と当初から決めていました。ただ、巡航船は毎日4便しかありません。宇佐に近い埋立を午前10時5分に出航する巡航船に間に合わせるため、青龍寺から宇佐大橋を経由して埋立乗船場まで小走りで急ぐはめになりました。

 宇佐大橋のたもとから歩くと、埋立乗船場の入り口はかなりわかりにくい場所にあります。高知海洋高校を右手に見送り、橋を渡ってしばらく歩くと、左側の集合住宅の脇に小ぶりの道標をみつけました。そこから個人宅の庭先のような狭い通路を抜けると、小さな港と待合所がありました。

 出航時間が近づくと、船長さんがやってきて、行き先の応じて料金を支払います。埋立-横浪間で620円。所要時間は55分。同乗者は先達さんに案内された7、8人のお遍路さんたち。途中にある福良乗船場の近くでバスに待ってもらい、巡航船を楽しみにきた、とのことでした。

巡航船から眺めた横波三里の空と雲。とても静かな浦ノ内湾が奥行き12km(3里)も続きます

 巡航船は定刻に埋立乗船場を出発、横浪半島に接した浦ノ内湾の南岸と反対の北岸にある合計12カ所の乗船場をジグザグにたどりながら湾内を縦断していきます。浦ノ内湾は内海なので波がほとんどありません。巡航船のエンジン音だけが響き渡り、波跡が後方に広がっていくばかりです。雲がちょっと多かったのが残念でしたが、デッキに出ると空がとても広くて実に気持ちがよかったです。船長さんはとても寡黙な方で、必要なことしか言葉を発しません。手慣れた様子でエンジンのシフトレバーと舵をさばきながら、乗船場ごとに岸に近づき、乗客がいるかどうかを視認してながら先に進んでいきました。

 福良でお遍路さんのグループが降りたあとは、ほかに乗ってくる乗客もなく、船内には船長さんと私だけ。心地よい海風に吹かれながら、ぼーっとしていたら、あっという間に横浪に着いてしまいました。私が小さな埠頭に降りると、岸を離れた巡航船はわずか数秒のうちに対岸に向けてスピードあげ、あっという間に小さくなっていきます。さばさばとして、潔いほどあっけない消え去り方でした。

横浪の埠頭に降りると、あっという間に巡航船はスピードを上げ、視界から消えていきました

 横浪からしばらく歩いて浦ノ内湾と分かれ、須崎に向かいます。途中でトンネルを歩いて峠を越えますが、トンネル内部は自動車の往来がけっこうあるのに歩道がとても狭くて危険を感じました。横浪から約2時間歩いて須崎市内にある多ノ郷(おおのごう)駅に到着。以前に出会った歩き遍路から教わったおいしい回転ずしを食べようと店を探しましたところ、残念ながら移転のため改装中でした。少し時間的に早かったのですが、このまま高知市内に戻ることにしました。

 翌日からは鉄道とバスを乗り継ぎ、第37番札所・岩本寺を経て、足摺岬まで一気に進むつもりです。これに備えて、JR高知駅で「四国西南周遊レール&バスきっぷ」という、とてもお得な切符を購入しました。2016年の料金は5,500円、5日間有効でした。この切符だけで、高知駅から松山駅までの鉄道とバスを片道で自由に乗れるので、この区間の交通費が半額以下になる計算になります。

 このお得な切符の存在を教えてくれたのは、公共交通機関を使いながら四国八十八ヶ所霊場を反時計回りの「逆打ち」で巡礼している女性のお遍路さんでした。徳島県の日和佐駅で上下の列車がすれ違うとき、わずかな待ち時間の間に線路を挟んで反対側のホームから大声で「とってもお得なのよ!」と大声で教えてくれたのでした。

 私の場合、予算や日数の都合もあって、初めての四国八十八ヶ所巡礼を25日間前後で終えたかったので、このお得な切符を目一杯活用して予算と日数を圧縮しようと目論見ました。ですから、須崎市から距離の離れた岩本寺は切符の有効期間が始まる翌日に回し、この日はホテルに早めに戻って洗濯を済ますことにしたわけです。

 このお得な切符は期間限定で発売されています。2017年の「四国西南周遊レール&バスきっぷ」は3月から発売がスタート。料金は6,300円で、有効期間は4日間、バス券は5枚までに制限されました。条件は2016年発売分よりも厳しくなりましたが、それでもお得な切符であることには変わりはないと思います。


   <四国西南周遊レール&バスきっぷ> 
  http://www.jr-eki.com/ticket/brand/1-5GO

【第12日 後半の部】
[歩いた日]2016.10.12
[コース]高知市中心部-(バス)-宇佐-青龍寺-宇佐ー(巡航船)-横浪-多の郷-(鉄道)-高知市中心部
[天気]曇り
[歩行距離]18.2km
[歩数] 2万3935歩

【利用した公共交通機関】
 <堺町-宇佐>
 とさでん交通バス

 料金 1,120円
 URL http://www.tosaden.co.jp/bus/rosen/

 <宇佐ー竜>
 土佐市ドラゴンバス
 料金  300円
 URL http://www.city.tosa.lg.jp
    (画面右下のバナー「土佐市ドラゴンバス」を参照)

 <埋立ー横浪>
 須崎市巡航船
 料金  620円
 URL   http://www.city.susaki.lg.jp/life/detail.php?hdnKey=340

 <多ノ郷-高知>
 JR四国
 料金  760円
    URL http://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/jikoku/

【お宿メモ】
[宿泊先]ウェルカムホテル高知
 住所: 高知県高知市追手筋1-8-25

 電話: 088-823-3555
  URL  http://welcomehotel.jp
[宿泊費]4,980円(朝食付き)
  この日で3泊目。高知市の繁華街・はりまや橋に近く、清潔感があってリーズナブルなビジネスホテルです。

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