五百羅漢に囲まれた山上の札所

 四国八十八ヶ所のなかでもっとも高い場所にある札所が第66番札所・雲辺寺です。標高は911m。愛媛・徳島・香川3県の県境が接する四国山脈の一角にあり、住所は徳島県ですが、実はお寺の境内に徳島県と香川県の県境があります。四国八十八ヶ所の巡礼者にとっては古来、讃岐の打ち始めとされています。
 宿泊したかんぽの宿・観音寺から雲辺寺ロープウェイ山麓駅までタクシーを使い、そのままロープウェイに乗って雲辺寺まで。歩き遍路の場合、第65番札所・三角寺から1泊2日で雲辺寺に向かうので、ずいぶん楽をしてしまいました。

第66番札所・雲辺寺は山頂部分の傾斜地にたくさんの伽藍が広がっています。本堂は比較的新しい印象でした。

 雲辺寺は山一帯が境内になっているらしく、参道のあちこちに五百羅漢の石像が置かれ、奥にはお釈迦さまの入滅を描いた涅槃図が石彫で再現されています。

 五百羅漢像は参道に沿って置かれているので、間近に表情を見ることができ、知人に似た風貌の羅漢さまに気づいたりして、ついつい見惚れてしまいます。五百羅漢は釈迦入滅後、仏典を編集するために結集した聖者たちと言われますから、四国八十八ヶ所のなかで「涅槃の道場」とされる讃岐のスタート地点にあわせているのかもしれません。

第66番札所・雲辺寺の参道に並ぶ五百羅漢像。誰でもどこかに自分と似ている像があるらしいです

 この雲辺寺には、歴史ファンにはちょっと知られたエピソードがあります。戦国時代に四国統一を果たした長宗我部元親の野望をめぐる話です。雲辺寺は香川・徳島・愛媛3県の県境が接していますから、江戸時代までは讃岐・阿波・伊予の国境にあるお寺だったわけです。そこに土佐の領主だった長宗我部元親が登ってきて、讃岐・阿波・伊予の国々を眺めながら四国をすべて併呑したいという野望を持ちました。元親がそのことを当時の住職に話したところ、住職は「あなたの器量は土佐一国だ。それが四国統一の野望を持つとは器を超えている。さっさと土佐に帰りなさい」と諭されたそうです。この言葉を聞いた元親は逆に発奮して四国統一に突き進んだとか。説明板によると、元親による四国統一の過程で、雲辺寺は戦火に巻き込まれ灰燼に帰したそうです。

 高知にある元親の銅像はずいぶんかっこよく、昨今の歴史ブームで元親の人気も高まっていますよね。雲辺寺もそんな元親の息吹を感じられるスポットです。

 このほかの見どころとしては、「おたのみなす」があります。なすの花はひとつの無駄もなく実になることから、「身を成す」との語呂合わせで、努力が報われて願いがかなうという縁起ものとされています。本堂のわきにおたのみなすが置かれていて、お守りとして納経所で求めることもできます。

 雲辺寺から第67番札所・大興寺へは長い下り坂が続きます。森の山道からみかん畑に出たところで、民宿「青空屋」の前を通過し、走る車の少ないアスファルトの車道を延々と歩き、疲れが出てきたころに大興寺の木立が見えました。

 ようやく香川県に入り、だんだんゴールを意識し始めました。
 

【第21日 午前の部】
[歩いた日] 2016.10.21
[コース] かんぽの宿観音寺-雲辺寺―大興寺-本山寺-善通寺グランドホテル
[天気] 曇りときどき晴れ
[歩行距離] 24.8km
[歩数] 3万1769歩

【利用した交通機関】
 <かんぽの宿観音寺-雲辺寺ロープウェイ山麓駅>
 タクシー
 料金 2550円
 <雲辺寺ロープウェイ山麓駅-山頂駅>
 雲辺寺ロープウェイ
 料金 1,200円(片道)
 URL http://www.shikoku-cable.co.jp/unpenji/index.htm

 

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