精進料理はベジフードの極み:高野山点景
高野山の宿坊、不動院でいただいた夕食です。宿坊の精進料理といっても、ここまで魅力的に演出されていると、もはや料亭レベルのような気がします。食堂は大広間のゆったりとした空間で、一緒になった他のお客さんが気になることもありません。海外の方も多いようで、椅子がけの席ではフランス語を話す女性3人組が楽しそうに食事していました。
宿坊で供される精進料理というと、夕食では胡麻豆腐や生麩、季節の煮物。朝食はひろうす(がんもどき)が主役になることが多いようです。口に入れると、昆布や椎茸から丁寧にとった出汁のうまみがじわりと広がり、文字通り口福を味わえる料理が並びます。肉や魚、卵などの動物質をまったく使わないで、これほどのうまみを引き出すには、大変な手間がかかっているに違いありません。宿坊の精進料理は、ベジタリアン・フードのひとつの極みではないかと思います。
高野山には117カ所の寺院があり、このうち52カ所が宿坊を運営しています。ひとくちに宿坊といっても個性はさまざまで、リピーターの方はそれぞれお好みの宿坊があるようです。もともと宿坊となっている塔頭寺院は全国各地の大名や有力者と宿坊契約を結んで先祖供養を行い、ゆかりのある人々を宿泊させていたので、そうした縁で泊まる宿坊が決まっている方も多いかもしれません。
機会があったら、いろいろな宿坊に泊まってみると、料理だけでなく、本堂の雰囲気や朝の勤行や法話などにもちょっとした個性の違いがあって面白いと思います。日本語と英語で法話を聞ける宿坊もあり、不動院もそのひとつです。
不動院には宿泊者が使えるライブラリーもあり、膨大な南伝大蔵経がずらりと揃っていたりして、本と一緒に静かな時間を過ごせます。私は高野山関連のビデオも楽しませていただきました。
高野山宿坊協会 https://shukubo.net/contents/stay/
不動院 https://www.fudouin.or.jp