鮎喰川沿いの遍路道

 きょうは午前10時には降水確率80%、正午以降は降水確率100%という、びしょ濡れ確実のシビアな天気予報の下、神山町阿川の植村旅館から、第13番札所・大日寺、第14番札所・常楽寺、第15番札所・国分寺、第16番札所・観音寺、第17番札所・井戸寺の5カ所を打ち、JR徳島駅前のホテルにたどり着く、というコースでした。

 結果として、雨が降り始めたのは、午後2時20分ごろ、ちょうど最後の札所となる井戸寺の参拝を終え、納経所から本堂前に出てきたタイミングでした。お参りが終わるまで雨が待ってくれたのか、それともお大師さまのお計らいなのかわかりませんが、5カ所の札所は気持ちよくお参りできました。

  とはいえ、井戸寺を出てしばらくすると雨は本降りになり、徳島駅前まで2時間近く歩くうちに、もはや全身ずぶ濡れ状態になってしまいました。なんだか、雨が降るとわかっていながら、遅い時間まで友達と遊んでしまい、ずぶ濡れになって家に帰った小学生のころに戻ったような気分でした。歩いた距離は30kmを少し超えましたが、アップダウンがほとんどないコースでしたので、体力的な負担感はあまりなかったという印象です。

 ひとつ発見があったのは、鮎喰川(あくいがわ)の渓流美です。遍路地図「四国遍路ひとり歩き同行二人」によると、阿川の植村旅館の横にある橋を渡って小さな峠を越えて再び鮎喰川の沈下橋を渡るように遍路道が案内されています。私も以前はこのルートを歩きました。でも、植村旅館のおかみさんによると、橋を渡らずに県道をそのまま歩いた方が景色がいい、というのです。

  「集落を抜けたところに、ここらで青石と呼んでいる、きれいな岩があるんよ。せっかくだから、見ていって!」と、おかみさんは阿波弁で教えてくれました。実際に県道を歩いて行くと、地図では遠回りにみえますが、平坦な道なので、対岸の遍路道よりも楽に歩けます。所要時間は同じくらいか、県道の方が少し早いと思います。そして、おすすめの青石は、緑がかった青い岩が何層にも重なっていて、きれいな渓谷美を見せていました。阿川から大日寺を目指す歩き遍路にはとっては、こちらの県道コースも気持ちよく歩けると思います。

神山町駒坂地区付近の鮎喰川。地元では「青石」と呼ぶそうです。

  その先、広野で神山温泉方面からくる県道と合流してから大日寺までは、けっこう距離があって、単調な道です。鮎喰川の両岸に県道が走っているので、どちらを歩いてもいいのでしょうが、距離的には県道21号線の方が広野ー大日寺間8.6kmほど。でも、大型トラックを含めて自動車の交通量は多いです。対岸の県道20号線は1kmくらい遠回りになりますが、道幅が狭く、交通量も少なめです。私は今回、距離的には短いけど自動車が多い県道21号線を通りました。

 県道21号線の入田町には、地元の方たちが歩き遍路のために休憩所を設置してくださっています。名前は「おやすみなし亭」です。無人の室内はとてもきれいに保たれていて、冷蔵庫には地元で収穫された果物やお茶が冷やされていました。ザックを降ろして冷たいお茶をいただくと、本当に元気が出ました。ノートにお礼の言葉を書いてきました。

休憩所「おやすみなし亭」に置いてあるノートの表紙。

  おやすみなし亭から大日寺までは20分ほど。一休みさせていただいたおかげで、すぐに着いた気がします。

 第13番札所は、四国八十八ヶ所が一般に広まった江戸時代には、いまの大日寺の向かいにある一宮神社と大日寺が一体で札所を構成していたそうです。江戸時代の四国遍路ガイドブックとしてロングセラーとなった眞念の著書「四國遍禮道指南」(しこくへんろみちしるべ)をみても、大日寺の名前はありません。明治時代の神仏分離政策で四国霊場が大きく揺れた末、札所は大日寺と定まったという経緯です。

一宮神社の本殿。

  江戸時代まで、四国八十八ヶ所の霊場では神仏習合が当たり前でした。僧侶や神職がお社(やしろ)に向かって般若心経を唱える光景が日常的に見られた、という話を聞いたことがあります。第37番札所は仁井田地区にあった5つの神社を意味する五社でしたし、第68番札所は琴弾八幡宮(ことひきはちまんぐう)でした。

  こうした四国八十八ヶ所の歴史は、それだけ神仏習合が日本人の中に溶け込んだ宗教観であることを再認識させてくれると思います。日本列島の豊かな自然に育まれた生命力溢れる神道に、慈悲深い仏の教えが加わり、いつのまにか日本人は「神さま仏さま」と唱えながら手を合わせるようになったのではないでしょうか。四国遍路を歩くと、あちこちで日本人のアイデンティティとか、自分を含めた日本人の宗教観などを考えさせられます。

 

 [歩いた日]2018.6.10

[歩いた距離]30.4km 39218歩

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