足摺岬へ(3)遍路道をたどり最果ての地に

この日、朝日がきれいでした。民宿いさりびは海に面した国道321号線沿いにあり、3月には真正面の水平線から太陽が昇ってきます。右手にはこれから歩く足摺岬が浮かび上がっています。朝食を用意していただいている間に、私は美しい日の出を満喫するという贅沢な時間を過ごし、この日がスタートしました。

民宿いさりびの玄関前から眺めた日の出。

 前日に市野瀬からバスに乗ってしまったので、この日はまず、市野瀬まで戻り、歩き直すことになります。バス停に向かおうとしたら、民宿いさりびの親父さんが「よしゃ、送ってちゃる。いますぐ、出るぞ」と勢いよく送迎を申し出てくれまして、8km離れた市野瀬まで軽自動車を飛ばしてくれました。恩着せがましいところがまったくなく、こんなふうにさっぱりとした好意の示し方ができるのは、さすがです。気持ちのいい親父さんでした。

 市野瀬に着いたのは午前7時15分ごろ。ここから民宿いさりびまで90分ほど一気に歩いて、昨日の遅れを取り戻し、改めて足摺岬に向かいました。

大岐海岸では、橋を渡ると、砂浜の遍路道が始まります。

大岐海岸は、約1.5kmにわたって砂浜がそのまま遍路道になっている区間です。アカウミガメが産卵にやってくる砂浜だそうで、遊歩道が整備されています。私が通りかかったときは、空と海が真っ青ですごくきれいなタイミングだったのですが、きょうは砂浜でボーッとしたりしないで、先を急ぐことにしました。

このあたりの遍路道は基本的に国道321号線を歩くのですが、ところどころ、古道の細い遍路道を歩ける場所があります。そのひとつで、農家のご夫婦が一休みしているところに出会ってしまい、お茶菓子のドーナツをご接待いただいたり、路上で柑橘類を売っていたおじさんにはみかんをいただいたりしました。お接待は断ってはいけない、というのが歩き遍路の不文律です。あれこれよもやま話をして、あまり長居をせず、きちんとお礼を言って立ち去るのが礼儀になっています。こんなに優しくしていただいていいのかなといつも思いますが、このお接待文化を抜きにして四国遍路は語れません。

以布利漁港を過ぎて遍路道を登っていくと、透き通るような磯がありました。

やがて国道321号線は幡陽小学校前の交差点にさしかかります。ここで遍路道は2つに分かれます。窪津経由の東岸ルートは足摺岬まで13.2kmで、多くの歩き遍路がこちらを選びます。特に民宿大岐の浜や民宿いさりびに連泊して足摺岬を日帰り往復する歩き遍路は往復ともに東岸ルートを選ぶのが一般的です。東岸ルートでも古い遍路道を避け、県道27号線をひたすら歩き続けるのが足摺岬往復の最短ルートになります。

もう一つの西岸ルートは土佐清水市中心部から中浜を通って足摺岬に行くルートで、距離は18.2kmになります。足摺岬は東岸と西岸で表情がかなり違いますので、往路に東岸を歩き、復路は西岸経由で戻ってくるのが足摺岬を満喫するルートだと一般的に言われています。私は今回、東岸から足摺岬を目指して1泊し、翌日に西岸経由で打ち戻るルートを選びました。

幡陽小学校前の交差点から東岸ルートを選ぶと、まもなく以布利港に出ます。このときにまた分かれ道があって、県道27号線をひたすら歩くルートか、海岸線に沿って古い遍路道を歩くルートかを選びます。前述のようにもっとも時間が短縮できるのは、県道27号ルートです。私は歩く遍路用の地図に記載された古い遍路道を選びました。

結果として、古い遍路道を選んだのは正解でした。以布利港では海辺の遍路道を歩くことができますし、さらに途中でオープン2年足らずというランチ&喫茶「Leafy」(リーフィ)を見つけることができました。Leafyは歩き遍路用の地図には記載されていないので、必要な方はGoogle Mapで位置を確かめてください。私が訪問した日のランチは煮込みハンバーグと五穀米にサラダがついたワンプレートで、果物とおいしいドリップコーヒーもいただきました。代がわりで果樹園を継いだご家族が昼間だけ営業しているそうです。白を基調とした店内で、気持ちのいい休息がとれました。

天狗の鼻から眺める足摺岬。灯台の高さ18mと比較すると、断崖の高さがわかります。

思いがけず充実したランチタイムを過ごした後、ひたすら足摺岬を目指して、歩くピッチをあげていきました。沖合を通る大型船舶をときどき眺めながら、アップダウンのある県道27号線を歩き続け、ちょっとランナーズハイのような軽い興奮状態になったころ、東駐車場が現れ、そこから少し歩くと、足摺岬の遊歩道が見えてきました。

足摺岬は「最果て」という言葉がぴったりくる岬です。それが観音浄土である補陀落への入口という信仰にもつながったのだと思います。いくつかある展望台のなかでも、私は天狗の鼻が気に入っています。遊歩道から天狗の鼻に出て灯台のある断崖絶壁と砕ける波をしばらく眺めたあと、第38番札所・金剛福寺に向かいました。

夕暮れを迎えた第38番札所・金剛福寺の本堂。

この日の宿は金剛福寺の宿坊です。

[歩いた日」2019.3.16

[天気] 晴れ 午前風強し

[コース]民宿いさりびー(送迎)ー市野瀬ー下ノ加江ー大岐海岸ー以布利ーLeafy(昼食)ー窪津ー足摺岬ー第38番札所・金剛福寺

[歩いた距離] 31.3km   40,474歩

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