歴史重ねる波切不動尊

 重たいリュックを高知市中心部のホテルに置き、小さなデイパックだけで札所を歩き回る前日のスタイルが大変快適だったので、この日も夜に同じホテルに戻ってくる周回ルートをとることにしました。目的地は第36番札所・青龍寺と横浪三里の巡航船です。高知県のど真ん中には横浪半島が東西に伸びており、その内海となっている浦ノ内湾は湾の入り口から奥まで3里(12km)もあり、横浪三里と呼ばれています。黒潮が打ちつける外洋とはまったく雰囲気の異なるおだやかな内海で、横浪半島の入り組んだ地形が多くの枝湾を作る、静かで美しい景勝地です。以前から、ぜひ訪ねてみたいと思っていました。

 高知市中心部から青龍寺に行くには、宇佐行きのとさでん交通バスに乗ります。はりまや橋近くの堺町バス停から乗車しますが、本数が限られているので時刻表の確認が欠かせません。

 午前6時55分発のバスに乗車して約1時間ほど揺られ、そろそろ宇佐に着くかなあ、と思っていたところで、突然バスが停まりました。ちょうど横浪半島の先端と宇佐を結ぶ宇佐大橋のたもとに着いたところでした。すると、運転士さんが「お客さん、青龍寺に行くんでしょ。みなさん、ここで降りるよ」と声をかけてくれました。近くに停留所はないし、私は降車ボタンも押していません。予想外の展開でちょっと戸惑いましたが、せっかくのご好意なので、そのままバスを降りることにしました。

 ここから青龍寺の最寄となる竜バス停に行く土佐市のドラゴンバスに乗り継ぎたいのですが、スカイライン入口というバス停が近くにあるはずなのに、どこにあるのかわかりません。仕方がないので、宇佐大橋につながる分岐で待っていると、時刻表通りの時間にバスがやってきました。終点の竜バス停まで乗車時間はわずか5分ほど。青龍寺の仁王門に着いたのは午前8時半近くでした。

第36番札所・青龍寺の本堂前には、波切不動尊が憤怒の形相で立っています

 青龍寺は仁王門から本堂まで海岸沿いとは思えないような急階段が続きます。近くの明徳義塾高校にモンゴルから相撲留学していた元横綱の朝青龍は、高校時代に毎日何回もこの急階段を登降して体を鍛えたそうです。朝青龍の四股名にある「青龍」も青龍寺から名付けたといいますから、このお寺にかなり愛着があったみたいです。

 青龍寺の本尊は波切不動明王。奥ノ院は横浪半島が太平洋に突き出した先端部分にあり、そこにも不動明王が祀られているそうですから、このあたりは空海よりもはるかに古い時代から四国の険しい海岸線を回って修業する行者たちの修業場だったとの見方もあります(宗教民俗学者・五来重の著書「四国遍路の寺」角川ソフィア文庫)。

 青龍寺の名前は唐に渡った空海が師匠の恵果から密教の奥義を伝授された由緒あるお寺の名前からとったもので、説明板には、日本に帰朝した空海が恵果への恩に報いるために寺を建てようと仏具の独鈷を空に投げたところ、いまの奥ノ院近くまで飛んできた、という縁起が書いてありました。また、昭和48年(1973)に宇佐大橋が完成する前まで、宇佐と横浪半島は渡し船で結ばれていて、その渡し船の運航は弘法大師のお供をした8人の子孫が昭和まで代々1200年にもわたって受け継いできたそうです。歴史と伝説を積み重ねてきた青龍寺は、四国八十八ヶ所霊場のなかでも独特の存在感がある気がします。

【第12日 前半の部】
[歩いた日]2016.10.12
[コース]高知市中心部-(バス)-宇佐-青龍寺-宇佐ー(巡航船)-横浪-多の郷-(鉄道)-高知市中心部
[天気]曇り
[歩行距離]18.2km
[歩数] 2万3935歩

【利用した公共交通機関】
 <堺町-宇佐>
 とさでん交通バス

 料金 1,120円
 URL http://www.tosaden.co.jp/bus/rosen/

 <宇佐ー竜>
 土佐市ドラゴンバス
 料金  300円
 URL http://www.city.tosa.lg.jp
    (画面右下のバナー「土佐市ドラゴンバス」を参照)

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